「その小さな体を支配するのは紫苑か輪か」ぼくの地球を守って感想
⚠️ネタバレ注意
🌱序文
この記事は、「『ぼくの地球を守って(以下ぼく地球)』の話の魅力を知りたい!」「ぼく地球の話への理解度を深めたい!」という方にオススメです。
「ぼくの地球を守って」全巻読んだ後にこの記事を書いているので、ネタバレ等を気にする方は注意して下さい。
ぼく地球を未読の方は、そのまますぐ下のストーリーを読んで下さい。
逆に「もう読んだよ!」という方は、目次から「どんな話?」の見出しへ飛んでください。
🌱ストーリー
・7歳の時に、前世である「紫苑」の時の記憶を思い出した輪(りん)くん。
前世での紫苑は、母星であるテスを離れてとある月基地で、たった7人で地球を調査する仕事をしていた。
そして、その月基地で感染病が流行り、生存者が「紫苑・紫苑の婚約者である木蓮(現世では主人公のありす)・秋海棠」の3人に。
左上→紫苑、左下→秋海棠、右→木蓮
秋海棠は、ワクチンを作った。が、1人分だけしかできなかった。
誰に打つか。当時、木蓮の事が好きだった秋海棠は紫苑の事を恨んでいたため、敢えて紫苑だけにワクチンを打つことに。
その後、秋海棠と木蓮はこの世を去り、紫苑1人が月基地に取り残された。
母星はもう戦争で滅んでいたため、帰る所が無い。しかし、自殺してしまったら生まれ変わりの輪廻から外されてしまうため、木蓮との「来世でも会おう」という約束を破ってしまうことになる。
そこで、紫苑はワクチンの効力が切れるまでの「9年間」孤独に耐えた。
そして現世。死期に9年の差があるため、ありす(元木蓮)達が高2の時、輪は小2。
前世の記憶の覚醒を果たしたメンバー達は、それぞれが前世の記憶に囚われてゆく…
特に前世に囚われていたのは輪。前世の記憶が甦ったと同時に覚醒した超能力を使って、9年間の狂気の原因である春彦(元秋海棠)に復讐を始める。
茶髪が輪(元紫苑)、黒髪が春彦(元秋海棠)
🌱どんな話?
一言でこの物語を要約すると「前世とのけじめをつけ、今と向き合おうとする話」。
今回はそこに焦点を当てて考察をしていきたいと思います。
🌱感想
・前世との格闘
最初は皆、前世と現世の記憶が入り混じって各々が葛藤し苦しんでいましたが、それまでの記憶を全て取り込んで未来への糧へと変えていくその姿に感銘を受けました。
特に印象に残ったのは、輪が「紫苑として生きていくか、輪として生きていくか」葛藤している場面。
輪が紫苑の割には子供っぽいことをするのは輪と紫苑両方が内在してて格闘していたからなのでしょうか。
よく考えたら輪はまだ7歳だから紫苑に比べれば思い出もまだ少ない。
色濃い紫苑の前世に囚われるのも無理はないでしょう。
「紫苑の記憶でいっぱいになるのが怖い。消されちゃうみたいで怖い。自分が居なくなっていくのが怖い。自分で自分の未来を消すのが怖い。」
ありすが指摘したこの言葉は、輪の心の声そのものではないでしょうか。
しかし、「紫苑と違って輪には真っ白な未来がある。それを紫苑に譲ってはいけない。」
そう輪に諭(さと)したありすのセリフにハッとさせられました。
輪に諭すありす
そして、ラストの脳波同調のシーン。
輪が毎晩見ている紫苑が独り取り残されている夢に、脳波同調を使って月メンバーの皆が入り込む。(どうやら前世での超能力は皆現世でも使えるらしい)
ひとりぼっちになってしまった月基地に皆戻ってきて、更にそこから連れ出してくれる。前世と現世の記憶を持ったからこそ実現した奇跡のようなハッピーエンドだなぁと思いました。
また、あのシーンは「現実はこっちだよ。月は過去。今は地球」ということを、前世の夢を見てうなされている輪に強調するためにあったのではないかと思いました。
「どっちが現実なのかわからない。目が醒めたら誰もいない。俺は独りで、ありすも両親も地球もこの総てが全部夢で、やっぱり俺はたった独り──」
と、輪が以前、前世と現世の区別が曖昧になっている様子を見せていましたが、このラストのシーンでやっと輪は前世への執着を断ち切れたのでしょう。
前世と現世の区別が曖昧になっている輪
最後「みんなで地球にかえろう」で終わる場面で、私も「やっと月基地の囚われから解放されたんだ!おめでとう!」という気分になりましたw
輪を含めた皆が現世を歩んでいく決心をした瞬間だと思います。
月基地の夢から輪を連れ出す様子
にしても、作者もあとがきで書いてましたけど、この話は輪に結構持っていかれましたねw
主人公のありすもまぁ、それなりに目立ってはいましたがw
だけど輪の心の支え役感は否めませんねw
・『未来へ還る』
「私たち 幾度も転生を繰り返して 銀河系も 地球も 回帰しながら みんな 未来へ還っていくんだわ」
数ある名言の中でこの言葉がとても心に残りました。いつか死が自分に、あらゆる別れを与えても、命をまっとうすることでめぐりめぐって再び出逢える時がくる。
「あなたが懐かしいのも、きっとまた未来で出会えるからなのね…」
木蓮と再び出逢いたい。そんな思いがあったからこそ、紫苑は、自害のような安楽的な道を選ばず、9年間孤独に耐えて命をまっとうできたのでしょう。
死を恐れず、今を尊く生きていたいと思える一文ですね。
🌱まとめ
皆さん、冷静に考えてみて下さい。
前世?来世?
は?バカじゃねw?
そう思ってましたよね。
でも、このマンガを読んで、実際「輪廻(生まれ変わり)」という概念が「昔からそこにあった」ような気にさせられたのではないでしょうか?
「ぼくの地球を守って」は、見事に「輪廻」という概念を、説得力を持って伝えることのできた作品だと思います。
少女漫画史に残る作品だ!と胸を張って言えるでしょう。
今回書いたストーリーは、あくまで「話の一部」であり、この他にも、紫苑の戦争孤児時代や、木蓮目線の話、他の月メンバーのお話など、紹介しきれてない事が沢山ありますので、ぜひご自身の目で読んで確かめてみてください!
最後まで読んで下さりありがとうございました!もし気に入って頂けましたらシェア等よろしくお願いします🙇